2015年4月17日。
大阪市民を対象にした「いわゆる大阪都構想」の賛否を問う住民投票は、わずか1万票差で否決された。しかしながら、反対票が上回ったといえども、現状維持でよいという判断ではない。
大阪の課題を解決するためには、新たな取り組みが必要である。
そんな中でより住民に近くよりきめ細かいサービスを提供するべく、議論が始まられようとしている仕組みがある。それが「総合区」である。総合区とは、平成26年に地方自治法が改正されて決められた制度で、大阪市のような政令市はそれぞれの判断で行政区(天王寺区や北区など)をこの総合区に格上げすることが可能となった。
これは、「いわゆる都構想」に反対していた自民党・公明党などが対案としても用意していたものでもあるが、果たしてこの総合区とは何かを簡潔に解説するすることにしよう。
○総合区の区長は一般職から特別職に
これまでの行政区の区長は普通の役人であったが、総合区の区長は<議会での承認>が必要となる。つまり助役並になるということだ。それだけに総合区の区長には権限と予算が与えられる根拠となるのである。
では、誰が区長になるのかということが重要だが、基本的には次の2パターンになるだろう。
・市長が橋下市政以前のように役人の中から選ぶ
・市長が行政マン、有識者などからふさわしい人物を指名する
後者の場合は、橋下市政が行っているような公募的な選択の方法も考えられるだろう。
また、これは筆者の意見だが擬似的に選挙が出来ないかとも考える。区長になりたい人物が立候補し区民が選ぶという形だ。公募の選考を区民が行うと考えてもいいだろう。法律的には面倒くさそうだが、十分検討してもよいと考える。
○総合区になれば地元の判断で出来ることが増える
総合区になれば、「予算と権限」が区に与えられるので、地元の問題、課題は地元の判断だけで解決することが出来るようになる。たとえば、次のような事例が総合区だけの判断で行えるようになるだろう。
<地域振興策>
・地域の経済を活性させるために大規模なイベントを行う
・区内のみで使える独自のクーポンなどを発行する
・区をアピールするキャンペーンを日本全国、あるいは世界的規模で行う
<福祉政策>
・地元のニーズに密着した高齢者サービスの実施
・地元のニーズに密着した子供相談所サービスの実施
・地元の事情に応じた通学路を確保するためのスクールゾーンの設置
<街作り>
・区の実情に会わせた看板サイン設置の制限を掛ける
・道路に実情にあったテーマを持たせて整備する
・公園を実情にあったテーマを持たせて整備する
<学術・健康>
・実情にあった図書館の設置
・住民のニーズにあった健康施設の設置
だいたい以上の事が考えられるが、どこまで総合区に権限と予算を与えるかは市の条例によって定められることになる。よって、あくまでの筆書の想定であることはご承知置き頂きたい。
○総合区の<区割り>で揉める可能性も
さて大阪市の場合、現在は24の行政区があるが、ひとつの考え方としてこのまま24行政区をそのまま総合区にするという考え方がある。
それとは別に、権限と予算を総合区におろすのであるから、もう少しスケールメリットがあった方がよいと考え、24の行政区を10程度の総合区に再編しするべきという考え方もある。
どちらにしろ、確実なのは今の行政区を再編するとなると、”どこの区とは一緒になりたくない”などという話が出てきてまた揉める可能性が高い。あれほど市民を二分した住民投票の直後でもあるので、総合区を導入するのであれば、住民同士の揉め事が少ない方法を考えるべきだろう。
たとえば複数の行政区を統合する場合でも、住所が変わらないように区名を残し、ブロックのような総合区にすることも一案である。
以上が総合区の概要である。
今後、市議会等々でどう議論がされていゆくのかを注視してゆきたい。
まず、率先して大阪市が総合区を導入すれば、他の政令市も動き出すことだろう。