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スマップが解散して平成の時代も終わろうとしている

By編集部

12月 28, 2016

(photo by Roxanne)

スマップが解散した。
いや、この記事を書いている時点ではまだ3日ある。スマップは平成28年12月末日をもって解散する予定である。
その活動期間は28年。ちょうど平成の世が始まったころ、スマップは誕生したのだ。
そしていま、天皇陛下の生前退位が盛んに議論され、おそらく順調にいけば平成は30年を迎えるあたりで終焉するだろう。
結局振り返ってみれば、平成が始まったころにスマップは誕生し、スマップの解散と共に平成が終わろうとしている。
つまり、稀代のスーパーアイドルグループは、平成の申し子であったのかもしれない。彼らの楽曲と共に、平成の時代を振り返ってみることにしよう。

スマップが誕生した平成の始め頃、日本はバブル経済に浮かれていた。
日本のマネーは株と不動産に向かい、両者とも空前絶後の上昇を続けていた。さらに、ジャパンマネーは国内にとどまらず世界中の不動産を買い占めていった。
「ジャパンアズNO.1」などと声高に叫ばれていたのもこのころである。この時期のスマップの楽曲は、若いアイドルグループらしく明るく元気の良い曲調が目立つ。
しかし、バブル経済は長くは続かなかった。平成も3、4年の頃になるとバブル崩壊の足音が聞こえてきた。しかし、多くの人々はこの事態を重篤なこととは考えていなかった節がある。いずれ、また好景気は戻ってくると考えていたのかもしれない。確かにバブルが崩壊して以降も、不動産業、証券業など一部の業種はダメージを受けていたものの他業種にはそれほどの悪影響がないようにみられていた。しかし、しかし、平成7年には「住専問題」が明らかになった。だが、それでも日本の国民の危機感はそれほどでもなかった。スマップの楽曲も、「がんばりましょう」「KANSHAして」「俺たちに明日はある」など今は停滞気味だが、これからまだまだいけますよといった感じの前向きなタイトルの楽曲が続く。
しかし平成9年、4大証券のひとつ山一証券が廃業。ついにバブル崩壊の衝撃は、白日の元にさらされることになったのだ。日本はもうダメではないのか? かつての輝きを取り戻すことはもうないのではないか? そんな思いが日本を覆った。
そして、平成10年、スマップが「夜空のムコウ」を発表。大ヒットとなる。

あれから 僕たちは なにかを信じてこれたかな
夜空のムコウには 明日がもう待っている

これまでのスマップの楽曲とは一転した暗いテーマ。アイドルグループらしくない青春の挫折を歌ってはいるが、この歌詞は当時の日本の姿そのものあった。
太平洋戦争に敗れた日本は、焼け跡から奇跡の復興を果たし、欧米諸国に追いつこうと必死に頑張ってきた。そして、いつしか欧州の国々の経済規模を超え、アメリカに迫る勢いを見せたのである。しかし、平成10年の頃には、日本の衰退が顕著になってきた。「ジャパンアズNO.1」など単なる夢物語であったのだ。「夜空のムコウ」はそんな現状を如実に表している。無論、この楽曲の制作サイドにそんな狙いがあったとは思わないが、大ヒットする曲には売れるだけの理由があるものだ。無言のメッセージとして当時の日本人が「夜空のムコウ」から現在の状況を感じ取ったとしてもなんの不思議もない話だ。

そして、日本人は、その頃から物質的な喜びよりも精神的な充実感を求める傾向が強くなる。つまり、高級な商品を身に着けるより、心の豊かさを求める傾向が表れ始めたのだ。「癒し」の時代の到来である。さらに、インターネットの普及により各人の個性を尊重する土壌が熟成し始めた。
そんな時代背景の平成15年、スマップ最大のヒット曲が生まれる。「世界にひとつだけの花」である。

NO.1にならなくてもいい

もっともっと特別なオンリーワン

そうなのだ、あきらかに日本および日本人の気質はかわったのだ。”無理をしてまで頑張りたくない、それより自分らしいことをやり遂げたい”。今の日本をみても、この気質は確実に根付いているように思われる。ちょうどこのころから急速に中国の経済が拡大し、平成22年、GDPレベルで日本は追い抜かれてしまったのだ。

こうして、まもなく平成は終わる。そしてテレビの向こうにはスマップはいない。
そう、望む望まざるにかかわらず、また新しい時代がやってくるのだ。
その新しい時代に、我々はどんな姿を描くのであろうか。その時は、刻一刻と迫っている。