(photo by Neerav Bhatt)
さて、今回は大変おもしろい実例があったのでご紹介することにしよう。
とある団体がミーティング向けの資料として作成されたグラフを当方で再構成したものである。
■不思議な省略の波線が入ったグラフ
これは、ある地方自治体の借金が平成22年から平成27年にかけて減少したことを表すグラフである。
グラフを見る限り、急激に借金が減少したように見える。赤い下降の矢印がそれを強調している。
しかしよく見ると、どうもグラフの縦軸がおかしい。
縦軸の基準は0円となっており、平成27年度4兆5677億円の借金があるにもかかわらず、まるで数兆円も削減し0円に近づいているような印象を与える。
これを可能にしているのは、二重波線の省略である。
うまい具合に波線をいれたというべきか、あまりにもあざといと言うべきか悩むところではあるが、約5兆円から4947億円減少した事実をより大きく見せる演出が施されていることだけは間違いない。
この手のトリックには、十分気をつけなければいけないだろう。
■高い値になるほど間隔が狭くなるグラフ
これは、ある自治体の活用可能財源の見通しを表したグラフである。
年を重ねる毎に活用可能額の累計が積み上がってくることを表している。
このグラフを見ると、途中から急激に累計額が上昇するようだ。大きな矢印がその印象をより高めている。
しかし、よく見ると、このグラフの縦軸がおかしい。どうも目盛りが等間隔ではないのだ。
<0-500億円><500ー1000億円><1000-1500億円>は等間隔だが、<1500-2000億円><2000-2500億円><2500-3000億円>の間隔が極端に狭い。
これは、縦軸に2500億、3000億という数字を入れることで、活用可能額を大きく見せる印象効果を狙っているようだ。
17年後の最終累計が1316億円であるにも関わらず、このグラフでは一見、3000億円近い累計が生じているかのような印象を与える。
まあ、なんとも論評しずらいグラフのトリックの一例である。
■単純に比較できない棒グラフ
このグラフはある自治体の借金の割合を表したグラフである。
このグラフをパッと見ると、借金自体は年々増えているが、青色の<臨財債等>平成18年度から急激に増え、オレンジ色の<その他>は極端に減少しているように見える。
しかし、このグラフも縦軸がおかしい。
<0-4兆円>の間隔と<4-5兆円>の1単位の間隔がどうも合わない。明らかに<0-4兆円>の1単位の間隔の方が広いのだ。
その結果として、平成25年度のデータを見ると、青色が「29117」、オレンジ色が「34176」であるのに、グラフ上では青色の方がかなり長い幅があるという滑稽なグラフになっている。
ここまでくると悪質な印象を持ってしまうが、ともかくこのような加工を施すことにより平成18年度より青色は急激に増え、オレンジ色は急激に減少しているという印象を与える効果がある。
データのトリックには十分気をつけなければいけないことを再確認させられる一例である。
今後も、特徴的なデータのトリックがあれば紹介してゆこう。