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飲食店はエンターティメント産業である理由

(photo by Alejandro Rubio)

ひさしぶりに訪れたゴマを使った料理に定評のあるお店。
しかし、そこは驚くような状況に陥っていた。
カウンター越しに厨房が見えるオープンキッチン方式になっているのだが、調理人が仕事の愚痴を言いたい放題。
もう、筆者はこの店を訪れることはないだろう。

この店に出会ったのは今から数年前。知人に、美味しい店があるから行ってみようと誘われたのが最初だった。
値段もそれほど高くないし、お好みのゴマを自分ですりつぶして食材に掛けるスタイルが新鮮でおもしろくもあった。
それから、ちょくちょく訪れるようになったのだが、いつも繁盛していて席の確保がままならず、いつしか足が遠のくようになっていた。

しかし、先日、たまたまその店の前を通りかかったので、懐かしさも手伝いそこでランチを取ることにした。
すると、どうしたことだろうか、かつてとは何かが違う。
それなりに客は入っているのだが、なにか妙な雰囲気が漂っている。
店員達の薄汚れた制服、あまり整頓されていない装飾品。。。

私は、ひとりランチだったので、奧にあるカンター席に案内される。
コートを脱ぎ、壁にハンガーが掛けてあったので「掛けていいですか?」と尋ねると、「ああ、どうぞ」と無愛想な対応。
これは、もうこの店はだめだと思ったが、とりあえず食事だけはして帰ろうと席に着いた。
そこから、いよいよ調理人の愚痴が始まる。まずは、大きな舌打ちからだった。

「チッ、うっとしいなあ」
「ほんま、じゃまくさいわ」
「なんでやろなあ、ほんま」

どうやら、調理器具かなにかの使い勝手に怒っているようである。
さらに、ホール係が注文を告げると、その料理を作るのがめんどうなのであろうか、

「いらんねん、そんな注文!」

と言い出す始末。

これが小声ならまだ許せるが、カウンターに座った客達にばっちり聞こえる声で話すものだから、筆者はなにか怒られているような気分に陥りながら箸をすすめることになった。
したがって、料理が美味しく感じられるわけもなく、早々に引き上げることにしたのは言うまでもない。

さて、なぜかつての人気店がこのようになってしまったのか、ポイントを挙げておこう。
まず問題なのは、調理人、ホール係を見渡しても責任者というべき人物が見あたらない点が大きい。中心となる人物がおらず、皆がそれぞれが動いているように見える。人物がいない。見あたらない。本来なら、店の経営を背負うべき責任者は、客の前では余計なことを言わないように注意するはずである。

そして、さらに大きな問題は、経営者が「飲食業はエンターティメント産業である」べきことをまったく従業員に伝えていないことである。
美味しい料理を出す事以外にも、「調理を見せる」「店舗内装・装飾を見せる」「サービスの良さを見せる」ことも魅力ある飲食店の大きな要素だという認識はかなり普及しているはずであるが、この店にはまったく伝わっていない。
それは、薄汚れた店内装飾を見ても判るし、結果的に厨房がオープンキッチン方式になっていることすら認識していないように見受けられる。

一時の人気で、経営者の思考は止まってしまったのであろうか。。。
このポイントは、今後この店の致命的な欠陥となるだろう。
早く気づいて方向転換することを期待したいものである。

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