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窮地に立たされたマクドナルドの未来-ビジネススタイルマガジン

By編集部

10月 15, 2014

(photo by haley. s)

今から10年以上前の話である。
大阪のある駅前に、有名ハンバーガーチェーン店がオープンした。
どこにでも見掛けるこのハンバーガーチェーン店だが、しかしこの店の様子だけは少し他の店とは異なっていた。

ハンバーガーチェーン店と言えば、無表情の笑顔に決まり切った応対という徹底されたマニュアル接客が普通だが、この店だけは、まるで市場の商店か小さな居酒屋のように愛想が良くてフツーの笑顔と言葉で話しかけてくるのだ。
この自然な接客が、ハンバーガーチェーン店に似つかわしくない賑やかさを作り出していた。

例えば、こんな感じである。

店員「いらっしゃいませ。今日は暑いですねぇ」
私「ほんまに暑いねぇ。ちょっと前まで寒かったのに。。。」

店員「いらっしゃいませ。急に雨が降ってきましたね」
私「ちょうど事務所に帰ってきたところやったから良かったわ。。。」

などなど、なんとカウンター越しに、店員と客で世間話が成立していたのである。
そして、馴染みになると、明らかにその客を認識して微笑み、「まいど!」とまで声を掛けて貰えることが出来た。

すっかりこの店の馴染み客になってしまった私は、ある時、カウンター越しに、この店のリーダーであろう女性店員に聞いてみることにした。

私「ここの店は、他の店と違って愛想いいですよね。 他に店員さんと世間話出来る店なんてないですよ」
女性店員「はい、うちはこの方針でやるんです!」
この方針を考えたのは、この女性店員なのかあるいは店としての判断だったのかは定かではないが、残念ながら、このユニークな店と決別する時は意外にも早くやってきた。

この店がオープンして3ヶ月ほどした頃である。
私はいつものようにこの店に行くと、店員がみな浮かない顔をしている。
特に、リーダーであろう女性店員は、一段と暗い表情だ。
そして、接客態度も一変し、どこの店でもあるようなマニュアルに支配された無機質なものに変わっていた。
これは本部から注意を受けたな、と簡単に察しがついた。

こうして月日は流れ、しばらくすると女性店員はいなくなり、他の店員も徐々に他の人に変わって行きいつしか自然な接客を売り物にしていた店はその痕跡を一切残さなくなった。

ちょっとした「あるハンバーガーチェーン店の反乱」は、こうして終わりを告げたのである。

この有名ハンバーガーチェーンとは、マクドナルドのことである。

マクドナルドは現在、ある意味、窮地に立たされている。

その理由は、2014年7月にマクドナルドが期限切れの肉を利用していた中国の食品メーカーから食材を仕入れていたことが発覚したためである。

これをきっかけに、日本マクドナルドは11年ぶりに赤字に転落する予想を発表している。

筆者がよくその前を通るマクドナルドの店頭を見ても、明らかに前よりはお客がいない。

今回の件は、マクドナルド自身が期限切れ食材を使ったわけではないので、マクドナルドもある意味被害者なのかもしれないが、発覚後のマクドナルドの対応はまずかったように思う。

それは、第一弾の謝罪文が、あまりにも消費者からピントがずれていたからである。

http://www.mcdonalds.co.jp/news/release_list.html

上記文章を見て貰えば判るが、要するに「販売を中止します」「仕入れ先を替えます」「お客様には、ご不便、ご心配をおかけし、大変申し訳ございません。」というメッセージなのである。

この時点においては、ひょっとしたら期限切れの食材を「食べたかもしれないお客様」に対するメッセージがなによりも先に来るべきである。

おそらく先に謝罪してしまえば、それに対する保障などの問題が出てくると考えたのかもしれないが、それならばあまりにも「マニュアル化」しすぎの対応である。

この後、3回にわたって公式なメッセージが出たが、最後まで「食べたかもしれないお客様」に対する謝罪はなかった。

今からでも遅くはない。ごめんなさいと一言メッセージを発信すれば、また状況も変わると思うがいかがだろうか。